パデルとテニスをどちらも未経験から始めるなら、最初にボールを打ち合うところまでの技術的なハードルは、パデルの方が低くなりやすいでしょう。
ラケットが短く、コートも小さく、サーブは下から打ちます。初心者でもボールを相手コートへ返しやすいようになっています。
ただし、「初心者にはパデルの方がおすすめ」と決めてしまうのは早すぎます。
パデルは専用コートがまだ少なく、基本は4人で行う競技です。
テニスなら近くにスクールが見つかる、一人でスクールへ通える、友人と2人でシングルスができるという人なら、実際にはテニスの方が始めやすい場合があります。
どちらが簡単かではなく、自分が何につまずきそうなのかで選ぶのが分かりやすいでしょう。
最初のラリーまでならパデルが入りやすい
ラケットスポーツを初めてする人にとって難しいのは、飛んでくるボールにラケットを合わせることです。
パデルのラケットはテニスラケットより短く、ガットと呼ばれる網状の部分がなく、板状の打球面になっています。
日本パデル協会も、短いラケットを手のひらに近い感覚で扱えるため、初心者でもボールへ当てやすいと説明しています。
コートもテニスより小さく、基本は2人で片側を守ります。
最初から広い範囲を一人で走って守る必要はありません。
「まずラケットスポーツが自分にできるか試したい」という人には、パデルは入りやすい選択肢です。
サーブでもパデルの方が最初の壁は低い
パデルとテニスではサーブの打ち方が大きく違います。
テニスでは、一般的にボールを頭上へ上げて、高い位置から打ち下ろします。
ボールを上げる位置とラケットを振るタイミングを合わせる必要があるため、初心者には難しい技術の一つです。
パデルでは、一度ボールを床へ弾ませ、腰の高さ以下で下から打ちます。
強いサーブを打てなくてもゲームを始められます。
そのため、「サーブが入らずラリーそのものが始まらない」という初心者のつまずきは、パデルの方が起きにくいでしょう。
ただしテニスも「初心者用」なら事情が変わる
ここで注意したいのが、普通のテニスだけを基準に比較しないことです。
日本テニス協会では、初心者が最初の日からサーブ、ラリー、ゲームを楽しめる「TENNIS PLAY & STAY」という仕組みを推進しています。
大人の初心者向けには「Tennis Xpress」というプログラムがあります。
初心者には通常より飛びを抑えたボールを使ったり、簡単な練習から始めたりすることで、最初から普通の黄色いテニスボールで本格的に打ち合う場合より難易度を下げられます。
つまり、
「普通のテニス対パデル」
ならパデルの方がラリーまで入りやすくても、
「初心者向けテニスレッスン対初心者向けパデル体験」
になると、その差は小さくなります。
初回体験を選ぶなら、競技名だけでなく初心者向けプログラムの内容まで確認した方がよいでしょう。
パデルは簡単に始められても、壁はあとから難しくなる
パデルにはテニスにない壁があります。
相手から来たボールが一度床で弾んだあと、後ろのガラス壁へ当たって戻ってきても、床へ2回目に落ちる前なら返せます。
これは初心者にとってチャンスが増える仕組みでもあります。
一方、壁からどこへ戻ってくるか、どこで待つかを覚えるのはパデル独自の技術です。
最初は、壁へ向かったボールを見ると反射的に追い掛けてしまいます。
慣れてくると、あえてボールを壁まで通し、戻ってきたところを打つ場面が増えます。
つまりパデルは、「初日にボールを返すこと」と「パデルを上手にプレーすること」の間には別の難しさがあります。
始めやすいから、上達もずっと簡単という意味ではありません。
近くにコートがなければテニスの方が始めやすい
実際にどちらを始めるか決めるなら、技術より先に確認した方がよいことがあります。
自宅や職場から通える場所にパデルコートがあるかです。
日本パデル協会の2026年9月時点の案内では、国内のパデル施設は25施設・50面です。
まだ全国どこでも気軽にプレーできる状況ではありません。
パデルには周囲をガラスや金網で囲んだ専用コートが必要なので、普通のテニスコートでは基本的に代用できません。
興味があっても、最寄りのコートまで片道1時間以上かかるなら、毎週続けるハードルは高くなります。
一方、近所にテニススクールがあり、仕事帰りや休日に通えるなら、テニスの方が現実的に始めやすいでしょう。
「どちらが簡単か」を調べる前に、まず両方の最寄り施設を検索する価値があります。
友人1人と始めるならテニスの方が予定を合わせやすい
人数にも違いがあります。
パデルの基本は2人対2人です。
自分たちだけで通常のゲームをするなら4人必要になります。
テニスは1対1のシングルスもできるため、自分と友人の2人でコートを借りてプレーできます。
「毎回友人と好きな時間に遊びたい」という人なら、テニスの方が人数の調整は簡単です。
ただし、一人でパデルを始められないわけではありません。
国内には、一人で入れる初心者スクールや個人参加イベントがあります。
パデルワンほしだでは、ラケットスポーツそのものが初めての人向けクラスも用意されています。
パデルを選びたいけれど4人集められないなら、コートを自分たちで借りるのではなく、スクールや個人参加を利用すれば解決できます。
一人で習い始めるなら両方ともできる
「知り合いに一緒に始める人がいない」という場合は、テニスとパデルのどちらもスクールを使えます。
テニスには大人の初心者向けプログラムがあり、各地のテニスクラブやスクールで体験レッスンが行われています。
パデルにも未経験者を対象とした体験レッスンがあります。
Padel Asiaでは、体験レッスンでルールや基本ショットを練習し、最後に参加者同士で試合をする流れになっています。
そのため、
「テニスは一人でも習えるけれど、パデルは4人集めないと習えない」
というわけではありません。
スクールへ入る前提なら、どちらも一人から始められます。
運動量だけでパデルを選ばない
パデルはコートが小さいので、「テニスよりほとんど動かなくてよい」と思われることがあります。
確かに広い範囲を走る場面は少なくなります。
ただし、パデルではネット前でのボレー、横方向への移動、急な方向転換などを繰り返します。
ラリーも続きやすいため、実際にゲームをすれば十分に運動になります。
「体力に自信がないからパデル」と競技名だけで決めるより、初心者クラスを選び、自分のペースで始められるかを見る方が重要です。
テニスでも初心者向けレッスンなら、いきなりコート全面を走り回る必要はありません。
運動不足なら、競技よりレッスンの強度を先に確認しましょう。
強く打ちたいか、ラリーを続けたいかでも選べる
最初の楽しさも少し違います。
テニスは、広いコートへ自分の力でボールを飛ばし、相手のいない場所へ打ち込む爽快感があります。
サービスやストロークを上達させ、強く正確なショットを打てるようになる面白さがあります。
パデルでは、強打だけでなく、相手の位置を見ながら返す、壁から戻るボールを待つ、ペアと協力して前後の位置を変えるといった駆け引きの比重が大きくなります。
パデルメーカーのバボラも、パデルでは単純なパワーよりコントロールと正確さが重要だと説明しています。
「自分のショットを磨くこと」に魅力を感じるならテニス。
「ラリーを続けたり、ペアで考えながらプレーしたりすること」に魅力を感じるならパデル。
この違いも、続けられるかを考える材料になります。
道具はどちらも体験後に決めればいい
どちらを選ぶ場合でも、初回体験の前から高いラケットを購入する必要はありません。
パデルでは、初心者体験時にレンタルラケットを用意している施設があります。
テニスでも体験レッスンでラケットを借りられるスクールがありますが、内容は施設ごとに異なります。
最初は施設の案内を確認し、借りられるならレンタルで体験します。
「自分にはパデルの方が合う」と思ってからパデルラケットを買う。
「テニスを続けたい」と思ってからテニスラケットを選ぶ。
先に道具を決めるのではなく、競技を体験してから決める方が無駄を減らせます。
初心者は「どちらが簡単か」より4つの条件で決める
パデルとテニスのどちらにするか迷ったら、次のように考えると分かりやすくなります。
| 自分の希望 | 合いやすい選択 |
|---|---|
| 初日からラリーを楽しみたい | パデルを試す |
| 下からの簡単なサーブで始めたい | パデルを試す |
| 友人1人と2人だけで遊びたい | テニスが始めやすい |
| 近所にあるスクールへ通いたい | 実際の施設距離で決める |
| 一人で習いたい | どちらも可能 |
| 壁を使う新しい競技を楽しみたい | パデル |
| シングルスもやってみたい | テニス |
| ペアで協力するゲームが好き | パデル |
大事なのは、「パデルの方が初心者向け」という一つの理由だけで決めないことです。
技術的には始めやすくても、通えるコートがなければ続きません。
反対に、テニスの方が最初のショットは難しく感じても、自宅近くに初心者スクールがあり、毎週無理なく通えるなら、その人にとってはテニスの方が始めやすいスポーツです。
迷ったら、まず近くに両方あるかを確認する
最終的には、両方の体験へ一度行くのが一番分かりやすい方法です。
近くにパデル施設とテニススクールの両方があるなら、
ボールを返す楽しさ、
運動量、
施設までの距離、
レッスンの雰囲気、
一人で通い続けられるか、
を実際に比較できます。
パデルは、最初のラリーやゲームまで入りやすいという強みがあります。
テニスは、シングルスができ、初心者向けプログラムもあり、継続する場所を探しやすいという強みがあります。
したがって、「初心者には絶対にこちら」と決める必要はありません。
最初の技術的なハードルを下げたいならパデル。
通いやすさや2人でプレーできる環境を優先するならテニス。
自分がつまずきそうな条件を先に見つけることが、初めてのラケットスポーツを選ぶ基準になります。
出典
日本パデル協会|パデルを知る
日本パデル協会|ルール
日本パデル協会|公式サイト・全国コート案内
日本テニス協会|TENNIS PLAY & STAY
日本テニス協会|TENNIS PLAY & STAYを体験したい
国際テニス連盟|Tennis Glossary: Tennis Court Layout
Padel Asia|体験レッスン紹介
パデルワンほしだ|パデルスクール案内
Babolat|パデルテクニック完全ガイド
