パデルを始めると戸惑うのが、壁際まで来たボールです。
「まだ返せそうだけれど、振ったらラケットをガラスや金網にぶつけそう」と感じることがあります。
このとき、ラケットの傷が怖いから壁際の球をすべて諦める必要はありません。
ただし、壁へ向かってラケットを振りにいく必要もありません。
判断基準にしたいのは、壁から離れた場所に打点を作り、安全にラケットを振れるかどうかです。
壁へボールを追いかけるのではなく、戻ってくる場所へ動く
パデルでは、相手のボールが自分側の床で1回バウンドした後、後ろや横の壁に当たっても、2回目のバウンドまで返球できます。
そのため、壁際へ飛んでいくボールを見て、
「壁に届く前に打たなければ」
と追いかける必要はありません。
むしろ初心者が壁ぎりぎりまで追ってしまうと、ボールと一緒に自分も壁へ近づきすぎます。
その状態でラケットを振れば、ラケットの先や縁が壁へ当たりやすくなります。
基本は逆です。
ボールを壁へ行かせ、跳ね返った後にどこへ戻ってくるかを見ます。
そして自分は、戻ってきたボールを体の前で打てる場所へ移動します。
「壁際のボールを取りに行く」というより、「壁がボールを戻してくれるのを待つ」と考えた方が分かりやすいでしょう。
止まる基準は「傷がつきそう」ではなく「振る空間があるか」
では、実際にどこまで追えばよいのでしょうか。
壁から跳ね返ったボールがコート側へ離れてきて、自分と壁の間に入り込まずに打てるなら、返球を狙えます。
短いスイングでもラケットが壁へ向かわず、体勢も崩れていないなら、壁際だからという理由だけで諦める必要はありません。
一方、ボールが壁のすぐそばに残り、
「ラケットを壁との隙間へ差し込んで振る」
「ラケットの先が壁へ当たりそうな方向へ振り抜く」
「体を無理にねじらないと届かない」
という状態なら、初心者は無理に返そうとしない方がよい場面です。
そこで必要なのは勇気ではなく、位置取りの修正です。
次に同じボールが来たとき、もう少し早く動いて、壁から戻るボールの進路に空間を作れるようにします。
「あと少し届く」は、追うべき球とは限らない
初心者ほど迷いやすいのが、ラケットを伸ばせば何とか届きそうな球です。
普通のテニスなら、ぎりぎりまで追ってラケットを伸ばす場面もあります。
しかしパデルでは、その先に壁があります。
ラケットを伸ばした先が何もない空間なのか、ガラスや金網なのかでは条件が違います。
特に壁に近い場所で大きく振ると、ボールではなく壁へラケットが向かうことがあります。
「届くかどうか」だけではなく、
「当てた後、ラケットがどこへ進むか」
まで考える必要があります。
届いても安全に振り終われないなら、その球は見送るという判断もあります。
1ポイントを失うことと、ラケットを破損したり手を傷めたりすることを同じ重さで考える必要はありません。
ラケットが自分側の壁に触れたら失点になる?
自分側の壁へラケットが触れたからといって、それだけで自動的に失点するというルールではありません。
国際パデル連盟のルールでは、プレー中にラケットや身体などがネット、ネットポスト、相手側コートへ触れた場合は失点になります。
一方、自分側の壁へラケットが触れること自体は、この失点条件には含まれていません。
ただし、
「ルール上ただちに失点しない」
ことと、
「ラケットを壁へ当てても問題ない」
ことは別です。
パデルラケットメーカーは、壁面やコート面への衝突によってラケットが破損する可能性があると注意しています。
そのため、壁へ当てながら返すことを前提にした打ち方は避けます。
ラケットの表面に傷がついたら、すぐ使うのをやめる?
壁際でプレーしていれば、ラケットの縁に擦ったような跡が付くことは考えられます。
ここでは「傷があるか」だけで判断するより、表面の擦れなのか、フレームにヒビや割れが生じているのかを分けて考えます。
メーカーは、フレームにヒビや割れがあるラケットを使用しないよう案内しています。
壁へ強くぶつけた後にヒビや割れが見える場合は、そのままプレーを続けない方がよいでしょう。
一方、見た目が擦れただけなのか、内部まで損傷しているのか自分で判断できない場合は、販売店やメーカーへ確認する方法があります。
「傷だから大丈夫」と自己判断する必要も、「少し擦ったから買い替え」と決める必要もありません。
傷が気になるならフレームを保護する方法もある
パデルラケットには、フレーム部分へ貼る保護用品があります。
メーカーからも、ラケットの縁を傷や衝撃から守る目的の保護用品が販売されています。
国際パデル連盟のラケット規則でも、劣化防止などを目的とする合理的な大きさ・位置の付属物は認められています。
新品のラケットへ傷を付けることが気になってプレーが小さくなってしまうなら、こうした保護用品を使う方法もあります。
ただし、保護用品を付けたから壁へぶつけてもよいわけではありません。
頻繁にラケットを壁へ当てるのであれば、保護用品より先に、壁際での位置取りやスイングを見直す方が根本的な対策になります。
壁際で怖くなったら、最初は「打たずに見る」練習でもいい
壁から戻るボールに慣れていない段階では、全部返そうとすると動きが慌ただしくなります。
まずはゆっくりしたボールを壁へ送ってもらい、
床でバウンドする。
壁へ当たる。
壁から離れる。
どこへ戻ってくるかを見る。
という流れを覚える方法があります。
そのうえで、壁から離れたところへ戻ってきた球だけを短いスイングで返します。
後ろの壁だけなら返せても、横の壁やコーナーが加わると軌道はさらに複雑になります。
角に入った球を無理に取りにいくより、初心者向けレッスンなどで跳ね返り方を確認してから試す方が理解しやすいでしょう。
結局、壁際のボールは追う?止まる?
ラケットに傷を付けたくないから、壁へ近づく球を全部諦める必要はありません。
しかし、
「あと少しラケットを伸ばせば届く」
という理由だけで追う必要もありません。
壁から跳ね返ったボールが離れてきて、安全な打点を作れるなら返す。
壁に向かってラケットを振るしかない、体勢が崩れている、振り終わったラケットが壁へ当たりそうなら無理に追わない。
この境界で判断します。
パデルで覚えたいのは、壁際まで突っ込んで球を拾うことではありません。
壁を使ってボールとの距離を作り、打てる場所で待つことです。
それができるようになると、「ラケットをぶつけそうだから止まる」という不安そのものが少なくなっていきます。
出典
International Padel Federation|Rules of Padel
NOX|How to do off-the-back-wall forehands or drives in padel
The Padel School|Struggling with the Back Glass in Padel? Fix Your Position First
